2017年12月03日

娯楽読物4-31 アッシェンバッハは、もういすにおちついてはいなかった

 アッシェンバッハは、もういすにおちついてはいなかった。ふせぐか逃げるかする身がまえのように、からだを立ててすわっていた。しかし哄笑と、吹きあげてくる病院のにおいと、美しい少年の近さとが織りまぜられて、夢の魔力となり、それが引きさきがたく、のがれがたく、かれの頭とかれの心をじっとくるんでしまった。

一座の動揺と放心のなかで、かれは思いきってタッジオのほうをながめやった。そしてながめると同時に、かれは美しい少年が、かれのまなざしを見返しながら、かれと同様にまがおのままでいるのを、認めることができた。

その様子はまったく、少年がおのれの態度と顔いろを、相手のそれに準じてきめているかのような、そして一座の気分は、相手がそれをさけているゆえに、かれになんの力も及ぼし得ないかのような観があった。この子供らしい、意味のふかい従順さは、いかにも防衛力をうばってしまうような、圧倒的なものを持っていた。

そのため白髪の男は、両手に顔をうずめることを、やっと自ら制したほどであった。それに、タッジオが時々からだをのばしたり、深い息をついたりするのが、アッシェンバッハには、なんとなくためいきか胸苦しさを表わしているように思われた。

「タッジオは病身なのだ。たぶん長生きはしないだろう。」とかれはまたしても、陶酔とうすいと思慕しぼが時々奇妙に解放された結果おちいる、あの客観的な気持で考えた。そして純粋な心づかいと、ほしいままな満足感とが、同時にかれの心をみたした。

 ヴェニス人たちは、そのあいだに演技を終って、引き揚げた。かっさいがかれらを送った。するとかれらの頭領とうりょうは、なお自分の引込みを冗談でかざることを忘れなかった。かれが足を引いておじぎをしたり、接吻を投げたりすると、みんなは笑った。

だからかれはそういうしぐさをくり返した。なかまの者たちがもう外へ出てしまってからも、かれはまだ、うしろむきにいやというほど灯火の柱にぶつかるような振りをした。そして苦痛で身をまるめるように見せかけながら、門のほうへしのび足で歩いて行った。

門までくるとついにかれは、突然、こっけいな不幸者という仮面をぬぎすてて、からだをまっすぐにのばして――いや、はね返るようにぴんとのびあがって、テラスの上の客人にむかって、ぺろりと舌を出してから、するりとやみに消えた。

浴客たちの一座はちりぢりになった。タッジオはもうとっくにらんかんのところには立っていなかった。しかし孤独の男は、給仕人たちのふしぎに思ったことには、まだ例のざくろ水の残りを前にして、長いことかれの小卓についていた。

夜はふけまさった。時はくずれて行った。かれの両親の家に、もう何年も前のことだが、砂時計が一つあった。――かれにはそのこわれやすい、意味の深い小さな器具が、まるで目の前におかれてでもいるように、不意にふたたび見えた。

音もなく、こまかく、あかさびいろに染まった砂が、せまいガラスの管をとおってしたたっている。そして上のほうのくぼみのなかで砂がつきかけたので、そこには小さな、急速なうずまきができていた。

 早くも次の日の午後、この強情な男は、外界を吟味ぎんみするための新しい処置を取った。しかもこんどは、ありったけの成果をおさめたのだった。つまり、かれはサン・マルコの広場から、そこにあるイギリスの旅行案内所へはいって行って、帳場でいくらかの両がえをしたあと、かれに応待している店員に、疑っている旅行者の顔つきで、例の宿命的な問いをかけたのである。

その店員というのは、厚い服を着たイギリス人で、まだ若く、髪をまんなかから分けて、目がくっつき合っていて、そのものごしには、あくらつにすばしこい南国ではじつにそぐわない、じつに変な気のする、あのおちついた誠実さがあった。かれは言いはじめた。

――「御心配なさるいわれは少しもございません。たいして意味のない処置でございますよ。こういったさしずは、暑気や熱風シロッコのからだに悪い影響を予防するために、たびたび行われますので……」しかしかれは、その青い目をあげたとき、旅行者のまなざしに――疲れた、少し悲しそうなまなざしに出会った。それは軽いさげすみをこめて、かれのくちびるに向けられていたのである。するとイギリス人は赤くなった。

「と申しますのが、」とかれは小声で、多少動揺しながらつづけた。「公式の説明でございまして、これを言い張りますのが、ここではよいとなっているのでございます。これから申し上げますが、この裏にまだ別のことがかくれておりますので。」そう言ってからかれは、持ち前の誠実な便利な国語で、真相を話しはじめたのであった。


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posted by 美健マスター at 06:00| ★娯楽読物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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