2017年10月02日

娯楽読物2-14 きさま、金庫に手をかけたら

「きさま、金庫に手をかけたら、これをぶっぱなすぞっ!」
 入口の近くにいた山下さんが、いつのまに用意したのか、ピストルをかまえて、怪人にねらいをさだめていました。

 しかし、なんのききめもありません。怪人はそれを見ると、いっそう、歯車の音を高くして笑いつづけるのです。

 そのとき、どうしたわけか、パッと電灯が消えて蔵の中は、まっ暗になってしまいました。停電でしょうか。いや、そうではありません。何者かが、一方の壁についているスイッチをおしたのです。

「だれだっ? 電灯を消したのは、はやくだれか、そこのスイッチをいれるんだ。」
 山下さんが叫びましたが、不二夫君は、遠くにいましたし、ほかの少年たちは、スイッチの場所をしりませんので、やみの中をウロウロするばかりです。

 そのときやみの中から、きみの悪い歯車のような声がひびいてきました。
「グーテンベルクの聖書は、たしかにちょうだいした。諸君、あばよ!」
 それをきくと、山下さんは、ものをもいわず、スイッチのところへ走っていって、それをおしました。

 蔵の中が、パッと、もとの明るさになりました。大金庫の扉はしまったままで、べつに異常はありません。そして、怪人の姿は、もうどこにも見えませんでした。かき消すように、いなくなってしまったのです。

 山下さんは少年たちといっしょに、蔵の中を、グルグルまわって怪人をさがしましたが、金庫のうしろにも、本棚のくぼみにも、怪人の姿は見えません。煙のように消えてしまったのです。

 なんという奇々怪々のできごとでしょう。黄金怪人はだんだん小さくなったり、だんだん大きくなったり、自由じざいに、からだの大きさをかえることができるのです。小さくなったときには、ネズミぐらいの大きさですから、ほんのわずかのすきまから、逃げだすことができます。いま、消えうせたのも、急にからだを小さくして、窓の鉄ごうしのすきまから、逃げだしたのかもしれません。

 もし、からだをそんなに大きくしたり、小さくしたりするやつがあるとすれば、それは、ばけものです。しかし、このお話は怪談ではありません。おばけや幽霊のお話をしているのではありません。この奇々怪々のできごとには、なにかわけがあるのです。手品のようなしかけがあるのに、ちがいありません。では、それはどんな手品なのでしょうか。




posted by 美健マスター at 06:00| ★娯楽読物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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