2017年09月30日

娯楽読物2-12 ところが、それから二日めの朝になると

 ところが、それから二日めの朝になると、さすがのおとうさんも、とうとう、不二夫君の話を信じないではいられぬような、できごとがおこりました。

 怪人から電話がかかってきたのです。おとうさんを、電話口に呼びだして、あの歯車のきしむようなぶきみな声で、不二夫君にいったのと同じことばを、くりかえしたのです。

「きみはいったい、だれだ? あんなものを盗んで、どうしようというのだ、売ろうとすれば、すぐにつかまってしまうぞ。」

「ウフフフ、おれは、金がほしいのじゃない。グーテンベルクの聖書そのものが、ほしいのだ。かならず、もらいにいくよ。」
 やっぱり、不二夫君が想像したとおりでした。

「あれは、金庫の中にしまってある。わしのほかには、だれにも、あけられない金庫だ。魔法でもつかわなければ、盗みだせるものじゃない。」
「ところが、おれは、その魔法をつかうのだよ。ウフフフ……、まあ、せいぜい、用心するがいい。」

 そして、電話は、プッツリきれてしまいました。
 これで、不二夫君が見たのは、まぼろしでないことがわかりました。おとうさんも、すこし、きみが悪くなってきたものですから、すぐ警察にとどけることにしました。すると、三人の警官がやってきて、蔵の内と外を、見はってくれることになりました。

 不二夫君は不二夫君で、このことを電話で、少年探偵団の小林団長にしらせますと、その日の午後には、小林少年が四人の団員をつれて、かけつけてくれましたが、なんと、その四人のなかに、井上少年と野呂少年もまじっていたではありませんか。これはどうしたことでしょう。

井上、野呂の二少年は、あやしい西洋館にとじこめられているはずでした。では、もう、あの西洋館から逃げだしてきたのでしょうか。しかし、それなら、あのできごとを小林団長に話すはずです。ところが、二少年はなにもいわないのです。まるで、なにごともなかったような顔をしています。なんだか、おかしいではありませんか。いったい、これはどうしたわけなのでしょう。

 怪人は三日のうちに、もらいにいくというのですから、今日にもやってくるかもしれません。それには、やっぱり夜があぶないのです。そこで、みんなは、夕がたから持ち場をさだめて、金庫の番をすることにしました。

 小林団長と四人の少年と、不二夫君とは、みんな蔵の中にはいって、すみずみに身をかくし、金庫をまもることになりました。不二夫君のおとうさんの山下さんも蔵の中にはいって、扉をピッタリしめ、その入口にいすをおいて、がんばっているのです。三人の警官は、蔵のまわりの庭を警戒することにしました。

 庭はもう、夕やみにつつまれています。そのうす暗い木立ちの中を、三人の警官は、四方に目をくばりながら、グルグル歩きまわっていました。

「おやっ、あれはなんだろう。ネズミぐらいの大きさだが、あんな金色のネズミはないよ、ほら、あの蔵の窓の下だ。」
 ひとりの警官が、目ばやく、それを見つけて、ほかのふたりにしらせました。




posted by 美健マスター at 06:00| ★娯楽読物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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