2017年09月23日

娯楽読物2-5 さて、怪人物のノロノロ自動車は

 さて、怪人物のノロノロ自動車は、さびしい方へ、さびしい方へと進んで、しばらくすると、大きな神社の森の中へはいっていきました。
 もう、あたりはまっ暗です。森の中には、街灯がごくわずかしかないので、足もとも見わけられないほどです。

「よそうよ。もう帰ろうよ。ぼく、こわいよ。」
 ノロちゃんが、井上君の手をひっぱって、だだっ子のように立ちどまってしまいました。
「だめじゃないか。せっかく、ここまできたのに。ここは山の奥じゃないよ。この森の向こうには、にぎやかな東京の町がつづいているんだよ。それに、バッジがぼくらを、まもってくれるから、だいじょうぶだよ。」

 井上君は、ノロちゃんの耳に口をつけて、しかるようにささやきました。そのときです。森のやみの中に、やみよりも黒いものが、モヤモヤと動きだすのが見えました。
 さすがの井上君も、それを見ると、はっとして、ノロちゃんといっしょに、逃げだそうとしましたが、もうおそかったのです。まっ黒な人かげが、ふたりのうしろにまわって、とおせんぼうをしていました。

 うしろだけでなく、前からも、横からも、おなじようなまっ黒な怪物が、せまってくるではありませんか。
 立って歩いているから、人間にちがいありません。ばけものでも、動物でもないのです。
「だれだっ。きみたちは、だれだっ?」

 井上君が、ノロちゃんをかばうようにして、どなりました。
「だれでもない。おれたちは、魔法博士の弟子だ。きみたちふたりを、これから悪魔の国へつれていくのだ。」
 黒いやつのひとりが、ぶきみな声でこたえました。

 遠くの街灯の光で、三人の黒んぼうの姿が、かすかに見えます。三人とも、ぴったり身についた、まっ黒なシャツとズボン下をはき、頭から三角の黒覆面をかぶっています。その目と口のところだけが、くりぬいてあって、そこから、にぶく光る目がのぞいています。

「たすけてくれえ……、映画のおじさん! 自動車のおじさん! はやく、はやく、たすけてえ……。」
 ノロちゃんが、死にものぐるいの声をだしました。

 すると、向こうの自動車の中から、まっ黒なやつがあらわれてきました。こちらの三人と同じ姿です。
「ウフフフ、わしが映画のおじさんだよ。だが、きみたちのみかたじゃない。わしこそ、悪魔の国のあるじの魔法博士というものじゃ。」

 ああ、映画のおじさんと思っていた男が、じつは、悪魔の国の首領だったのです。二少年の運命は、これからいったい、どうなるのでしょうか。




posted by 美健マスター at 06:00| ★娯楽読物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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